UP10.特別企画鼎談「新オフィスを、語る」

2015年6月29日、アップフロンティア株式会社は、創立10周年を機に、創業の地・三軒茶屋を離れ、
表参道に新たなオフィスを構えました。
オフィス移転に際し、内装建築のデザインを手掛けていただいた元インテンショナリーズ共同設立者、
Summer Sonic、Japan Fashion weekなどにおけるステージデザイン、多摩美術大学芸術人類学研究所(元所長:中沢新一)の
内装建築等を手掛けられたタイ在住の建築家、SUPERSWEETのデザインディレクターでもある遠藤治郎氏と
南青山のSRETSIS INNを手がけ、SDレビュー受賞歴もある、FARO DESIGNの住吉正文氏をお迎えし、
新オフィスのコンセプトやデザインの考え方、空間づくりに込めた想いなどを伺いました。

創業の地から、表参道へ

創業の地から表参道へオフィスを移転された理由をお聞かせください。

横山
三軒茶屋で創業し、9年程いましたが、人数が増え、そろそろ限界となったので移転に踏み切りました。場所の選定に際しては、社員が通いやすいところ、毎日通っていて気持ちが上がるところがいいということで、表参道は立地としては最高でしたが、なかなか出物がなく、同じ沿線で渋谷、青山1丁目あたりかなと考えていました。結果的に、いちばんいいこの場所に決まりましたが、ここを選定したポイントの一つが、むき出しの耐震強化用の鉄骨。普通の会社なら、有効スペースを狭めているのでマイナスでしょうが、このガジェット感が、アップフロンティアっぽくていいなと。これに惚れ込んだのも大きな理由ですね。

改装にあたって、どのような空間をイメージされましたか?

横山
社員が楽しく、ユニークな発想を持って、モノづくりに取り組める環境にすること。そのために、みんながちょっと息抜きできるコミュニティスペースを創りたいと考えました。遠藤さんがこれまで手がけられてきた作品、建築物がすごく魅力的で、それでお願いしようということになりましたが、最初に遠藤さん、住吉さんと話をした時に、波長が合ったこと、そこがいちばん大きかったですね。これならお願いしても大丈夫だと確信できました。

お二人は通常、案件を引き受ける際、業務に対する理解や社員のキャラクター等を考慮された上で、決められるのでしょうか?

遠藤
とても重要で、そこを吸収するのがほとんどといってもいいですね。ヒアリングして、どれだけ読み取るかが設計の半分を占めていて、後の半分は、場所、敷地です。この場所でいうと、外から室内に入って、いちばんプライベートなところに来た時に、もう一度、外の表参道の緑とつながる。それをどう段階的に創っていくか、です。そういった場所の話と、もう一つが使う人の話で、経営層の方、社員の方、たまに来るお客様、初めて来るお客様というようにグルーピングして、その人たちがどのように会社の活動と絡むのかということから設計が出てきます。
それらの要素を相互に関係するよう設計しますが、結局、何を見せて何を防ぐか、そのバランスを取る作業ですね、設計というのは。今、僕はタイのバンコクを拠点にしているので、最初のコンセプトと基本設計部分を住吉くんと共同作業し、実詳細設計以降の実務は彼メインでお願いし、最後に照明のプログラムをやりました。とにかく古いビルなので、難しいところも多々あって、そこは住吉くんが現場でいろいろ苦労したと思います(笑)。

住吉
今はLINEやSkypeなどの通信手段があるので、コミュニケーションが取りやすく、かなり楽です。アップフロンティアの皆さんともSkypeでやり取りして、メールはほとんど使いませんでした。どんどん情報を共有するやり方が面白かったし、今までとは違ってきていると感じましたね。
横山
わからないことや疑問点が出た時に、気軽に投げることができるし、何より訊くのを忘れない。やりやすかったですね。
遠藤
顔も見ることができるし、オンタイムでコミュニケーションできるので、ダイナミックですよね。ITのスピード感・躍動感みたいなものが、プロジェクトにあったような気がします。

表参道の緑を取り込む

横山社長から、最初にプロジェクトの打診があった時、お二人の中に、発想の起点となるイメージはありましたか

遠藤
この場所のポイントは、やはり緑です。
住吉
表参道に面しているという圧倒的なキャラクターですかね。

遠藤
僕は表参道が地元なので、このビルは昔から好きで、ここに決まるといいよね、と話していました。天井が低く、鉄骨をどう処理するか、というのはありましたが、非常にポテンシャルの高い場所だと思います。
住吉
もう一つはアップフロンティアの皆さんのキャラクターですね。アプリケーションやソフトウェアなど、ガジェットの中身を創る会社ですが、その作業と皆さんがオフィスの奥に閉じたままとならないよう、創っている人の人柄が少しでも前面に出るようなパーソナリティを表現できないかと、初めに遠藤さんと話しました。
遠藤
組織としては、インディビジュアリティ(個人)とコモン(集団)で動く部分があると思いますが、個人の自由やクリエイティブな面を阻害することなく、チームとしてドライブしていくため、空間がどうそれをサポートできるか、そこですね。会社としての枠はあるけれども、みんなにはできるだけ自由でいてほしいし、そのバランスをいい形で具現化したいというお話だったので、エントランスの3Dフィギュアとインジケーターのアイデアも、そのあたりから発想しています。

横山
遠藤さんからアイデアをいただいた時、うちの会社のことをよくご存じだなと(笑)。我々にとっては、まさにストライク。ちょうどVRや3Dデータを取って、アプリで表現するという最先端のことを手がけているので、それをフィギュアとして象徴的に飾るという発想は、ほんとにビックリしました。

空間の構成やデザイン上の留意点などについて、ご説明いただけますか。

住吉
会議室を含むパブリックゾーンと奥の執務エリアの大きく2つに分かれますが、それを不透明な壁を立てて区切るのではなく、ある程度、相互に関係性をもたせられるよう、一部分をガラスにして、光が行き来できるようにしています。大中小の会議室がほしいというリクエストでしたが、全部同じでも面白くないので、他とは異質のロフト空間を設けました。ロフトの部分も、ガラスを使って、光が出入りできるようにしています。
横山
一応、会議室という位置づけですが、休憩室になるかもしれませんね(笑)。

住吉
ロフトの下の空間は、天井の低い倉庫にしています。実は今回、収納スペースに苦労しました。壁を天井まで立てて、一面の収納にすれば簡単ですが、見通しがきくようにすると収納力が減るので、ロフトの下を収納にするアイデアを思いついたわけです。
横山
エントランスに入ると、表参道側まで視界が抜けていて、外の緑が目に飛び込んでくるようになっているのが特徴的で、とてもいいですね。
遠藤
設計では、行き止まりのない空間を創るというのが重要なポイントになっています。外から来て、洞窟みたいな空間を抜けてエレベーターに乗って上がってくると、そこまでは閉じた空間ですが、そこから室内に入った瞬間、ぱっと視界が開けることで、表参道に一気に戻ることができる。渋谷側も見晴らしがいいので、もともとこのビルが持っている一種の景観性能を活かそうと考えました。外の表参道があって、部屋の内部の外周にもオフィス参道を設けることで、表参道がぐっと近くなる、そういうことを考えたわけです。

人と、そして土地と会話する

お二人は、こうしたプロジェクトに関わる際に大切にしていることはありますか?

遠藤
施主さんと同じゴールを見ることができるかどうか、ですね。これ、あった方がいいよね、ということが共有できるか。ゴールの共有は重要です。そこに、設計がモノになるかならないかの重要なラインがあります。設計者にとって、“これで大丈夫”という瞬間があって、それは空間として美味しくなっている、成立する、という暗黙の境界線で、それをいつも探しています。そういうクオリティ・セーフゾーンがないと、ただの建物になってしまう。なかなか説明しにくいのですが、それは空間的な特性だったり、サーキュレーションであったり、ゾーニングであったり、カラーリングだったり、素材だったり、いろいろなレベルであるんですが、今回は、それが早い時期に見えました。もちろんいろいろ紆余曲折はありますが、そこは同じイメージをお持ちだったので、大丈夫だと感じていましたね。
住吉
何かのアイデアが削られたとしても、成立する強さみたいなもの、ですね。それが大きい意味でのプランニングで、表参道との関係性やパブリックッスペースとプライベートスペースの関係性とか、そういう大きい空間の関係性が成立しないと難しい。
遠藤
もっといい素材を使うとか、天井を抜いてランプを吊るすといった、この空間がもっとベターになるアイデアはあるにしても、重要なのはベースとなる空間構成で、それでかなりの部分成否が決まります。
住吉
今回に関しては、エントランスのカウンターに並ぶフィギュアがかなり利いているので、あれで大丈夫だと(笑)。

遠藤
そういうアイデアも会話から生まれるものです。だから常に相手ありきで、アップフロンティアの皆さんと話さなければ、思いつかない。ヒアリングして、それがアイデアに落ちていく。場所の話でいうと、エントランスのフィギュアがあるカウンターと各収納は、この建物の1階部分の石垣をイメージしています。もともとここは代官町で、この建物の素晴らしいところは、この敷地を活かして、1階部分の石垣を遺して建物を建てている点です。このビルの設計者は、もともとの土地としっかりコミュニケーションしていて、それがここの価値になっている。ですから、この室内のインテリアも、そこを継承し、場所と会話する、ビルと会話するという意味で、石垣のイメージを取り入れています。加えて、エンジニアにはバーチャルな仕事をしているだけに、フィジカリティというか、手触り感みたいなものが大切だと思っていて、カウンターに仕込んだフィギアのスイッチも、ローテクの重たい感触のものを意図的に選んでいます。

永遠の未来志向

オフィスは、最終的には使う人が完成させていくものですが、社員の方にどのような空間として育てていってほしいと思われますか?

住吉
普通のオフィスと違って、自分たちでガジェットを創り出す感覚でカスタマイズしてもらえると面白いと思います。主に素材は木なので、ビスを打ったり、いろいろなものを取り付けたり、棚を自分たちで創っていく、使い込んでいくというイメージで、カスタマイズしてもらえることを期待しています。
遠藤
通常、オフィスというのは禁止事項しかないと思いますが、そういう堅苦しさではなく、あれもできる、これもできるという可能性が感じられる場所として使ってもらうのがいちばんだと思いますね。コンピュータ的にいうと拡張性でしょうか。来たお客さんに、“これ、いつ完成するの?”といわれても(笑)、“うち、永遠に未来志向ですから”と返せる、そういうコミュニケーションができる余地はいろいろ残しているつもりです(笑)。

今後、このオフィスが、アップフロンティアの一つの顔となっていくと思いますが、最後に横山社長から、今後の抱負をお願いします。

横山
ここは今まで以上に、お客様が来たいといってもらえる場所、空間になったと思っています。せっかくこういう感度の高いところに来たわけですから、今まで以上に面白いものをどんどん発信していきたい。社員のみんなには、アンテナを張り巡らせ、他に先駆けた最新技術を取り入れて、最良の環境でユニークなアイデアを出しながら、日々の仕事につなげていってほしいと思います。

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